おかえり ただいま そしてそれから(MrChildren ツアー2007“HOME” in真駒内アイスアリーナ)

人がいた。いつか愛した¨人¨がいた。切り裂く爪と、包み込む掌。爪を隠してなでてくるのでも、冷たい刃をつきたてるだけでもなく、そのままのその手で触れてくる。
やっと会えた。本当は、ずっと前から会ってた。触れられてできたひっかき傷も、その傷に重ねてきた温度も消えない。忘れらんない。忘れてたとしてもすぐ蘇る。その声と、その音。いつか愛したモンスター。滑稽で醜くてだけど同時に美しい、その正体はただの¨人¨。切り裂く爪と包みこむ掌、その両方を持ったただの人。愛してる。その事を思い知るためだけに、私は来たよ。
演出中にPOPザウルスとしての使命をはらみつつも、それでも一昨年よりも去年よりも、もっとずっとしなやかに音と戯れる彼らがいた。「彩り」・「andI〜」・「youthfulday」・「いつでも微笑みを」再会の歓喜から、「AnotherStory」・「もっと」・「PIANOMAN」」音と戯れ音を纏い、「ランニングハイ」・「Centerof〜」・「DANCE〜」徐々に獣の片鱗を現してくる。それは「フェイク」で最高潮に達しリミッター解除かと構えれば、そこにいたのは“人”だった。「全ては嘘」と嘆くと同時に「全ては真実」だと願う。人のまま、人として手をのばしてきた。「Any」・「ポケットカスタネット」・「Worldsend」、そしてsalyuちゃんのパートをオーディエンスに託した「toU」、「タガタメ」・「しるし」・「終わりなき旅」。
人に焦がれて人を求め、後悔と祈りの堂堂巡りに飽きてしまうかな。でもたくさんの後悔から生まれるいくつかの祈りがヒカリになって、希望の歌を紡いでく。“人”が同じ“人”に贈るラブソング。その手をやっとつかんだ。今度こそ掴んだ。もうだいぶ前からのばされてたその手を、気紛れかもと信じれなかった。信じきれなかった。
愛してる。どうしてなんて自分でも判らない。でも3年前の春にあの眼に掴まって、2年前の夏にこの音に殺された。残像のようにかすめてっては、だけどもしっかりと“想い”だけ残してく。その正体を確かめたくてここまで追っかけてきた。いつ、なんて。どうして、なんて知らない。ただ確かなのはこの声とこの音に心奪われるという事。いつか愛した、幻かと諦めたこともあった、“人”の姿。取り零しては拾いなおす過程そのものが、私にとってのヒカリになる。その事実は違わないから、幻でもよかった。応えた手が空をきって、幻だと確認する方が怖かった。
忘れない、忘れてなんかやるもんか。この記憶が何を生むのか、どんな未来を芽吹かせるのか、それはまだ判んないけど。ただ何かにつながればいいなと願う。そう出来た暁には、愛した意味が判るかな。今はまだ愛してるという事実だけ。

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<その他報告>
・アイスアリーナだからってエアコンないなんて聞いてねぇぞ(くっそ暑かった。
・今回はサニさん修ちゃん浦さん不参加で、コバタケ迎えた台形フォーメーションが基本布陣。そこにコーラスや管楽器、ストリングスが彩って「ご馳走さまでしたぁああ!!!」とエキサイトするしかない。ミスチルとかの歴と格がもつの安定感て、言い換えれば一定品質保証みたいなとこがあると思うんです。今になって、今だからか揺るがして越えようとしてんのか。いつもの布陣より音数少ないはずなのに、すげぇ迫力を、なのにとてものびやかに伝えてくる。特にサクのボーカルが、いつになく不安定なトコ狙ってきてた。バンド感っていうのを音とボーカルのテンションの寄り添いだとジャッジしてきてたんすが、「いつでも微笑を」とか音にこめた温度と声が伝える温度の矛盾がすげーゆらぎ生んでた。サク流の違和感のあり方、なんだろうか。今になってか、今だからか。どちらにしろスタジアムツアーが楽しみだというだけですよ。
・その台形フォーメーションのせいか、いつもよりメンバーの立ち位置が近くてビジョンに映る映像がすげぇイイ画角の連続。武史さんの向こうに田原さんの背中見えたり、ナイスカメラポジション!やべぇ、これDVDちょう楽しみ!!
・セッティング狭いってのもあるけど、フロントライン3人が(サクはまぁ前から動いてたけども)よぉ動くようになったのも画角に影響でしょうか。田原さんがさー、田原さんがさーーー(メロメロ。正直歌の途中はやっぱサク見ちゃうのよ。だってどんな顔して歌ってんのか気になるもん。でもフっとビジョン切り替わった時に釘付けになっちゃうんですよねー。今回は武さんもいるから、向かって左縦ラインに振り回されまくり。
桜井和寿に対し、音楽に関する部分を信用しきった分(作家としての能力に対する評価ともまた別)個人格に関してはホントにどーでもよくて。歌ってる最中は表情気になるから見ちゃうけども、MCになった途端むかって左縦ラインに視線固定する自分の現金さを改めて痛感。いやー、ホント何にビックリするって、糸目のおっさんが調子こいて話してるのは腕くんで聞き流してるのに、武史さんや田原さんの一挙一動に「キャっ!」って反応する自分。JENさんや中川さんには普通ににこにこしちゃうけども、コバタケ・田原の縦の布陣は乙女心発動地帯でっせ。
キャンドルナイト考慮の演出なのか曲中に一回、会場中の電気消えました。そっからわずかに灯ったライトがキャンドルの火みたいですげーキレイでしたわ。
・延期理由の張本人ということでJENさんがよく喋ってくれたり客側もJENさん歓迎・甘やかしムードなのが糸目のおっさんおもしろくなかったのか、その空気を逆手にとってJENさんをイジてやがった。自分に場の主導権ないとヤなんだろうか。とても楽しそうにさり気なく貶めたり唆したりしてましたわ。あと最後の最後のメンバー紹介んトコで、いつもの順番的に中川さん→田原さん→JENさんと紹介すると客側も想ってたし田原さん本人もそのつもりで前でようとしてたら「鈴木英哉ー」とフェイントかますボーカリスト。えぇ?!っていう会場の空気や田原さんに「オレ?」ってなってるJENさんにも非常に満足そうだったよ。今更別に失望しないし、かといって喜びもしないけど、思うが侭で宜しいんじゃないですか。
・前々からサンプリングってか、曲と曲のつなぎ?そのアレンジセンスに毎度震撼しますけども(IvUん時の「hallelujah」→「andI〜」はやばかった)、今回もまった「イマジン」を挿入しての「Center〜」とか、「DanceDanceDance」のあのアレンジから「フェイク」に、そんでもって「Any」のつなぎとかよぅ。歌が一番届く総合演出。くっそー、思い出すだけでもすげぇパンチ力。なによりも「彩り(音源アレンジ)」から始まり「彩り(ライブアレンジ)」で終るあの構成。音源のよさってそれこそ“一定品質”的なトコだと思うんですが、ライブバージョンのハープのあの生々しさ。入り口と出口をその配置で担当させるってのがただもうエキサイト。
*演出の区切りとして歌の配置をブロックで把握してんで、上記のは厳密な曲順とは異なります。多分。*